審査結果発表

実現した夢部門 受賞プラン詳細

最優秀賞
審査結果
最優秀賞
プラン名
「砂の遊びとアート」活動と砂場設置プロジェクト
実施日
2015年 9月19日〜2018年 9月 9日のうちの 26日間
団体名
NPO法人 福島SAND-STORY
主催
NPO法人 福島SAND-STORY
開催場所
福島市四季の里、じょーもぴあ宮畑、福島市子どもの夢を育む施設こむこむ館、福島市乙和公園(福島市)、いわき駅前多目的広場(いわき市)
参加者数
各回100〜2000人
スタッフ数
30人
写真

四季の里公園での砂の遊びとアートイベント

遊んだ後でネットをかける子どもたち(乙和公園)

乙和公園の砂場で遊ぶ親子
実施概要
 私たちNPO法人 福島SAND-STORYは、東日本大震災と原発事故以後の福島県内において、子どもの重要な発達や親子関係を築くことができる「砂場」の取戻しと新たな砂遊びの可能性を求めて、「砂の遊びとアート」活動と砂場の新規設置に取り組んできました。
 具体的な活動としては、@福島県棚倉町で産出される良質で安全な砂を用いた大型の特設砂場「プラージュ」(フランス語で「砂浜」を意味する)を公園等に設置し、親子砂遊びのプログラムやサンドアート制作の実演と実技指導を行うイベントを福島県内で開催:福島市「街なか広場」(2015年)、福島市飯坂町「乙和公園」(2016年・2017年)、「十六沼公園」(2017年・2018年)、「こむこむ広場」(2017年・2018年)、いわき駅前多目的広場(2016年・2017年・2018年)、A上記イベント会場内に来場者のくつろぎ空間となる「ホスピタリティコーナー」を設け、子育て相談や食育サポートを実施、B行政が行う砂場イベントプログラムのコーディネート協力:福島市「四季の里公園」(2015年・2017年)、「じょうもぴあ公園」(2016年)、Cイベント終了後、会場で使用した砂の保育施設、学校、公園等への無償提供による継続的な砂遊びの機会づくり:これまで60か所を超える砂の提供を行う、D行政との連携による福島市飯坂町「乙和公園」への砂場の新規設置等があります。
 2015年9月から2018年9月まで取り組んできた「プラージュ」イベントには毎回百名前後から数千名の参加者があり、今後も続けていく予定です。これが第1の「実現した夢」ですが、さらにもう一つ2016年に福島市の乙和公園にて「実現した夢」に焦点を当てて報告します。
 福島市飯坂町の「乙和公園」は、親子連れ、小学生、高齢者、散歩で訪れる市民等、普段から幅広い年齢層の利用があった公園でしたが、残念なことに砂場は無く、特に未就園児のいる家庭からはその存在が望まれていました。当法人は、@地域住民の子育てや遊び環境に関する要望の把握、A地域における様々な団体や組織、行政とのコラボレーションの実現、B地域住民と東日本大震災による避難住民との交流促進、C地域に愛される"砂場活用と管理のモデル的運用、D子どもたちの健全育成と故郷に対する誇りの醸成、Eすべての世代が生き生きと交流し循環する豊かな町づくりへの貢献を目的に掲げ、砂場イベント及び砂場の新設事業に取り組みました。

 「いいざかプラージュ2016」では、公園内に棚倉町の砂による巨大砂場とオーストラリア産のホワイトサンド砂場を設置。地元の幼稚園児と女性コーラス団体(高齢者)の砂遊び交流を皮切りに、子どもとの関わりを学ぶ大学生ボランティアも導入し、参加延べ人数およそ100名の「砂の遊びとアート」イベントを実施しました。小学校高学年の男児グループが、両日、アート活動に夢中で取り組んだり、親子連れも次々に訪れたりして砂遊びに没頭しました。これまでの砂遊びのイメージを一新するアート的な展開には大人自身が新鮮な感動を抱き、子どもと共に遊びに熱中しました。その中には我が子に初めて砂を触らせたという原発事故からの避難家族もおり、いきいきとした子どもの姿に涙を浮かべていました。プラージュ活動では、ホスピタリティ空間も重要な要素であり、保育士や児童委員、食育アドバイザーでもある法人スタッフが母親の思いを受け止めました。これらも、思いきり遊ぶ子どもの姿が間近にあり、母親自身が安心できるからこそ叶えられる場面です。

 こうした活動や交流が地域の方たちの身近にいつもあるように、わたしたちはプラージュと並行し、2016年、福島市との協働による砂場を同公園に新設しました。それは2.5×3mという小さな砂場の誕生ですが、近年、街区公園(かつての児童公園)への砂場の設置率が5割を切るなかで、改めて子どもにとって必要な遊具とは何かを見直すとともに、地域における重要な子育て環境として、また住民間の交流の場としてもたいへん大きな意義を持つ空間として息づいています。
アピールポイント・参加動機等
 乙和公園における砂場の誕生は、さらなる幅広い年代の公園利用者を呼び込みました。固定遊具での遊びに飽きて立ち去っていた親子が、じっくり腰を据えて遊ぶようになりました。散歩での通過が主目的であった人たちが、砂場で遊ぶ親子の様子に足を止め小休止しながら語らいあう場所になりました。砂場の設置が、人々の公園への滞留時間を延ばすことにつながりました。子どもたちは既成の設備にただ"遊ばされる"のではなく、自らが創り出す「遊びの主人公」になりました。我が子のいきいきとした姿を目の当たりにする時間は親に喜びをもたらし、親と共に遊ぶ時間は子どもたちを大きな幸せで包みます。それは知らない子ども同士のかかわりを生み、親同士の交流にもつながります。また、訪れた人がその様子を見守る中で癒され活力をもらったりもします。乙和公園は日常的に多くの小学生にも利用されていますが、「いいざかプラージュ2016・2017」でサンドアートに魅了された子どもたちが放課後、この砂場で砂像作りにトライするようになり、他の子どもたちにも広まっています。
  猫対策として、わたしたちは覆いとなるシートを設置しました。それを子どもたち自身が遊びの前に外し、終了時には元に戻しています。地域の方にも、「シートがずれていることがあれば直していただきたい」「この趣旨を広めていただきたい」というお願いをしました。行政との協働においても、福島市が子どもたちにも分かりやすい案内表示を設置しました。

  砂場のオープニング・セレモニーでは、招待した女性コーラスの部長さんがおっしゃいました。「待ち望んでいた砂場が誕生しました。この大事な砂場をみなさんで可愛がっていきましょう」と。
  子どもたちにとっては、思いきり自己実現ができると同時に友だちとのかかわりを深めることが出来る場です。大人にとっては、子どもたちの姿から"心の栄養"をもらうことが出来る場です。砂場とのつながりが「可愛がる」ということがベースとなったとき、その管理・運用は、行政と住民間の責任の押しつけや一律の役割分担、当番制などではなく、自律的・自発的なものとして誰にとっても当たり前のことと受け止められていく。いま、乙和公園は世代を超えた一人ひとりの大事な場となり、地域の財産として、その根を深くしています。砂場をベースにした子育ち・子育て、町づくり、そしてこの「いいざかモデル」を全国の公園に広めていくことができればと夢見ています。

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