審査結果発表

実現した夢部門 受賞プラン詳細

入選
審査結果
入選
プラン名
たねはな文庫
実施日
2019年 5月 29日〜毎週水曜日
実施者
塚崎 かおり
主催
塚崎 かおり
開催場所
汀公園( 和歌山県和歌山市 )
参加人数
1日約25人
スタッフ数
1人
写真


実施概要
 毎週水曜日、午後3時から5時まで、和歌山市の中心部にある汀公園にて、スーツケース1つ分の絵本や、大人向けの本や雑誌などをシートに広げています。4時頃、人が多くなってきた時間に、お話会を開催しています。お話会は、チリンチリンとミニシンバルを鳴らして合図をします。シートに子ども達が集まってきたら「お話のろうそく」を灯す歌を唄って、お話の世界へ。指や人形を使った素話に近いお話をする時もありますが、その時のメンバーにあった絵本や、季節の絵本を楽しみます。わらべうたや手遊びも取り入れています。

 公園で開催しているので、”遊び場”的要素も取り入れたいと思い、けん玉やコマ、アナログゲーム、夏は水遊びや砂遊びができる遊び道具も用意しています。遊びの絵本もたくさんあるので、絵本に出てくる物を作ったり、やってみたりという事も少しずつ取り入れています。また、外だからできるわらべうたの集団遊び(はないちもんめ、かごめかごめ、など)もやっています。また、絵本は貸出もしています。

 開催してからまだ3ヶ月ですが、少しずつ常連さんも出てきました。小さい子を連れたお母さんが多いのですが、一緒にわらべうたの集団遊びをしたりすると、出身の地方によって歌が違ったりして、懐かしみながら楽しんでいます。また、お話会での読み聞かせをやりたい!と言ってやってくれる方も出てきました。このように地域のお母さんたちを巻き込んで、大人にとっても子どもにとっても居心地のいいサードプレイスになれば、と思っています。

 小学生は、公園で遊びがてら、絵本を覗いていく子や、私とおしゃべりだけして帰っていく子などいますが、まだまだ認知度が低いので、子どもへの広報は課題です。

 また、学生ボランティアが来てくれたり、子育てを終えた世代の方がお一人で来てくれたりと、世代間の交流の場になりつつあります。

 文庫の時は小さな看板と、本の借り方などのお知らせと一緒に、「うちの子よその子みんなの子」というキャッチフレーズも書いてあります。文庫では、どの子にも誰にでも読んであげて、読んでもらえて、文庫の時間の子ども達の見守りは皆でしていける環境を作るように工夫しています。
アピールポイント・参加動機等
●文庫をやりたい!
 この春に愛知県から和歌山へ引っ越してきました。4人の子どもを抱えながらの新しい生活に、孤独と不安を感じていました。小学生の娘は、転校で不登校になり、ますます友達のいない生活になりました。そんな中、愛知県で私達家族の大切な居場所だった文庫の存在を思い出しました。夫の不在も多い、いわゆるワンオペ育児の中で、文庫の時間は親子の関係に斜めの関係を作ってくれました。文庫のおばちゃんのひざで絵本を読んでもらえる我が子。そのほんのひと時が私にとっては親子で癒される大切な時間でした。なので、あんな場所に出会って孤独から抜け出したい、また、同じように不安を感じている人もいるかもしれない、と思うようになりました。
 私はライフワークとして、素話を幼稚園などで語ってきたり、大人向けに素話や絵本を子育てに取り入れることの楽しさを伝えたり、という活動もしてきましたので、今の子ども達には特に本に触れる機会を少しでも多く持って欲しいと強く思っていたこともあり、文庫への夢が膨らみました。
 そして、自分の子どもにとっても、地域の人たちと交流できる機会にもなると思い、文庫を開こう!と思いました。

●公園でやりたい!
 文庫というと、自宅を開放して行う家庭文庫や、公共施設などで行う地域文庫などがありますが、私は野外でやりたいという想いがありました。それは、愛知で「森のようちえん」を立ち上げたりなど、自然保育に携わってきた経験から、子どもの居場所、遊び場として、子どもがもっともこどもらしくいられるには、野外が一番適していると実感していたからです。また、冒険遊び場プレーパークの分野で意欲的に活躍している友人達と活動していたので、子ども達は大人の暖かい見守りの中で、自分らしく自由に過ごせる場所が必要だと強く感じていました。また、親子だけではない斜めの関係を地域で作って行くことで子育て世代の私達母親のストレスはかなり軽減することは体験していましたので、そのような場にしたいと思い、読み聞かせという方法でまずはそんな関係を意識できる環境づくりにしようと工夫しました。

 また、公園とは、一見自由な場だけれども、高度な社交性も求められる場です。実際、公園で遊ばせるときに他の親に気を遣ってしまう、遊ばせ方を気にしてしまう・・という声はよく聞きます。私自身もそうでした。文庫を利用してくださるお母さんにも、こういう場があってうれしい、救われた・・とおっしゃってくれる方も出てきました。

 また、文庫というと室内が一般的ですので、ノックして向かわなければなりません。ということは、絵本や読書の良さを感じている意識の高い方が来ることがほとんどです。好きなことが共通している同士はすぐ仲良くなれ、居心地もいい。
 その点ではとても大切な在り方だと思うのですが、一方で読書や読み聞かせの大切さに気づいてほしい、楽しさを知ってほしいと思うのは、これまで関心のなかった方です。親子のコミュニケーションツールとして、育児を何倍も楽しくしてくれる、かつ、子どもの自己肯定感を高めるなど良いことずくめの絵本の良さをたくさんの方に知ってもらうには、屋外の公園で偶然やっていた、この”偶然”に、大きな可能性を感じるのです。時間はかかるかもしれませんが、必ず必要としている方や子どもに出会えると思っています。

 また、小学生などもふらりと遊んでいる公園で”偶然”やっている事で本に興味のなかった子も、こんな本もあるのか?という本の出会いの場になるのではないかと思っています。実際、偶然公園にきた子が「こんなのやってるんだ!来てよかった!」と言ってくれた事もありました。

●公園文庫の夢を叶えて気付いたこと
 1つは、前述したとおり、公園での子ども同士の遊ばせ方に悩んでいたり、疑問があるお母さんが結構多かった事です。
 文庫の時間は、自由に遊ばせなれる、そう感じてもらえる環境を作っていきたいです。もう1つは、公園を毎週利用することで見えてきた地域の問題です。汀公園は、どちらかというとビジネス街だからか、ゴミのポイ捨てが多いです。(この件は市の方にもお伝えして対応してもらっていますが・・)特に、ビールの空き缶や栄養ドリンクなど、大人のゴミが多いのも気になります。文庫中に小学生がポイ捨てするのも見かけました。それは当然だと思います。大人がポイ捨てしているのだから、真似するのが子どもです、でも、拾う大人もいることも見て欲しいと思います。文庫の時間はゴミ拾いから始めています。ゴミ問題から、働き方の問題も見えてくるような気もします。
 また、地域は、人口流出が激しく、子どもの数が減っているのだそうです。汀公園は駐車場もなく、本当に地域の方々が利用する公園なので、ここの利用者を増やすことで、子育てしやすい、住みやすい街になるよう、小さな一歩ですが、街の活性化にもつながればと思っています。

●アピールポイント
 最後に私のたねはな文庫のアピールポイントは、誰にでもできる!ということです。

●アピールポイント
 最後に私のたねはな文庫のアピールポイントは、誰にでもできる!ということです。長年家庭文庫をされている方が「ダンボール一箱分の本とちょっぴりの勇気」があれば誰でも開ける!とおっしゃっていました。私はこの言葉に感銘を受けたわけですが、そこに、レジャーシートを一枚足せば、さらにどこにでも文庫を開けます。それが公園文庫です。文庫を開く際に公園を管理している市に問い合わせたところ、公園利用として有り得る行為などで許可は必要ないと言われました。管理団体にもよるかと思いますが、公園文庫は誰でもいつでもできるのです。
 プレイパークやイベントは、仲間や資金がたくさん必要になってきますが、公園文庫は、とりあえず、一人でも始められます。(私は、越してきてたった二ヶ月で、知人もほとんどいない状態でも始められたのです!)そして、必要としている方、賛同してくださる方は必ずいます。
 一人で始められる、地域交流、子育て交流の場が公園文庫にはあります。「文庫をやっている」これだけで、公園利用者に共通点ができます。初対面の人にいきなり挨拶するのは躊躇することもありますが「文庫やってます!」という大義名分があるので、挨拶もしやすく、友達になりやすいです。
 私はあちこちの公園で文庫が開かれ、本を通して人が集まり、楽しく過ごして皆で子どもたちを見守っていけるあたたかい地域が作り上げらていくのではないかと感じています。

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